食べ物の好き嫌い(偏食)を克服すると人生が豊かになります

食べ物の好き嫌い(偏食)を克服すると人生が豊かになります。

偏食があるあなたへ、「好き嫌いは直せますよ」。

偏食(食べ物の好き嫌い)は、必要とする栄養素に偏りがある食事の状態です。

これは乳幼児・小児期・学童期では、しばしば話題になり、育児に懸命なお母さんの悩みのたねになっていますね。

また、成人してからの偏食は、社会的な生活にも影響を与えます。

私たちの身体が、栄養素を取り入れること(食事)によって成り立っているのは間違いがありません。

必要な栄養素を摂取しないと、将来、健全な成長の遅延が起こり、生活習慣病になってしまいます。

まずは、どのように好き嫌いが生じるのかを理解することが必要ですね。

好き嫌いのメカニズム

食べ物への好き嫌いを考える上で、その入口である、私たちの味覚がどのようなものなのかを知る必要があります。

味覚について

一般的に、味には「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「旨味」という5つの基本味があります。

私たちは、舌や軟口蓋にある食べ物の味を感じる小さな器官である味蕾(みらい)によって味を感じます。

味蕾にある味細胞が食品の味の成分を感知し、その刺激が神経を介して脳に伝わることで、私たちは味を感じているのです。

つまり、食品の味の多くは、この中のどれか1つ、あるいは複数の味が組み合わさった形で感じています。

この時、甘味はエネルギー源、塩味は、ミネラル(無機塩類)、酸味は腐ったもの、苦味は毒、うま味はタンパク質の存在を知らせる刺激となっています。

味覚経験が不十分の人は、酸味の料理を食べ物が腐っているという感じを、ゴーヤを食べると毒のような刺激を受けとるわけです。

さらに、私たちが美味しさを感じる時、味の5つの基本形だけでは説明できません。

つまり、味の5要素だけで、本当の味覚は決まらないのです。

風邪を引いて鼻が詰まった時など、食べるものがいつもと違うことを経験したことがあるでしょう。

味覚の他に、視覚、聴覚、触覚、嗅覚の5つの感覚を「五感」と呼びますが、美味しさを感じる時、この五感が「風味」といわれる味わいを作り出します。

この風味を味わうことのできる喜びが、好き嫌いから抜け出せる鍵になります。

この風味が味わえない情況、つまり、ある期間、持続的な味覚の失調になることを味覚障害(味覚減退・味覚消失・無味症・異味症)といいます。

その原因となるものには、亜鉛不足、薬剤の服用、口腔疾患、神経疾患、加齢、喫煙、口の乾き、ストレスなど、様々なことが考えられます。

食品成分としての亜鉛は、味細胞の新陳代謝に必須となる栄養素で、不足すると、味を感じる能力が低下してしまうと考えられています。

私は、5年前に、味覚障害と診断され、大学病院で2年間の診療をけて、味覚を取り戻した経験があります。
その時、嗅覚も低下していました。
完治して大好きなエビが以前の味になった時は、本当に嬉しかったです。

味を感じるためには、食品の栄養成分の必要な摂取と、味わう心を大切にすることです。

好き嫌いのメカニズム

人間の味の好みに関する発達は、母親の胎内にいるときから始まるといわれています。

胎児は、羊水を通じて、母親が摂取した食物の風味や匂いを感じて、生まれたあとも、母乳を通じて風味を感知します。

羊水や母乳を通した味覚の体験のあと、離乳期に初めて口にする固形食がどうであるかによって、食物の好き嫌いが決定づけられます。

母乳やミルクしか飲んでいなかった赤ちゃんが、新しい食べ物による味覚を経験することは不安や恐怖を生じます。

食べることによって、腹痛や下痢などの不快な思いをした場合、その食べたものに嫌悪感を持つでしょう。逆に、満足感が得られた時には、その食べ物を好きになる経験をします。

食べ物の好き嫌いは、後天的に得られる経験に大きく影響されることがわかります。

さらに、2歳頃に食べていたものは、多くの場合、大人になったあとも好きな食べ物になることがわかっています。

食の経験を重ねることが不安感を軽減するのです。

そうすると、好き嫌いを克服するには、料理を味わう経験(食の経験)を増やすことになりますね。

そのためにも、食品の栄養への理解が必要になってきます。

好き嫌いを直すために

私は田舎から都会に出てきた時はひどい偏食でした。
一人の下宿暮らしで、調理経験のない学生ですから、といって今のようにコンビや手軽に食べられるファミレスなどがない時代、極めて偏った食生活だったことを思い出します。

運よく、栄養学校に勤務したことで、仕事として昼食を食べること(検食と呼んでいます)で、無理やり強制された半年後には、あと少しの食品を除けば、いろいろな食品を食べることができ、味わうことができるようになっていました。

また、結婚して子供ができて、自分で料理を作るようになって、より食品や栄養・衛生に関する関心が強くなりました。

趣味の一つである、オートキャンプでは、料理に腕を振って、周りから喜ばれています。

そういう経験から、向上心の高いあなたには、食の経験を増やしてゆく努力をすれば、自分の気持ちを豊かにしてくれる新しい味覚に出会える、という楽しみを理解して欲しいです。

乳幼児・児童に対しての好き嫌いは、身体的に食べるための器官が未熟なことや幼児の生活行動もあるので、少しの配慮や見守る気持ちが必要です。機会があれば書きたいと思います。

味覚に対しては、私たちは保守的だといわれます。

しかし、新しい経験も臨む気持ちも持っています。

偏食のある方は、豊かな人生を送る方法の一つとしても、食べ物の好き嫌いを克服して下さい。

【参考文献】
・人体の構造と機能、医歯薬出版株式会社

・Wikipedia

・子どもの味覚【前編】食べ物の好き嫌いはどうして起こるのか?、ベネッセ教育情報サイト、https://benesse.jp/kyouiku/201212/20121213-2.html

近い将来、昆虫食が食卓に!

将来の私たちの食卓に昆虫が並ぶかもしない

 

都会の一部のレストランのメニューにのるほど、ブームなっている昆虫食ですが、その現状と将来を見てみましょう。

食糧問題と昆虫食

2050年、世界の人口は90億数千人になると推計されています。

そういう未来が来ることを考えると、予想されるのは「食糧問題」です。

2013年、国際連合食糧農業機関 (FAO) は、食糧や飼料としての昆虫の利用が、食糧問題の解決の一つの可能性となることを報告しました。

2010 年に出た資料には、食用昆虫のある種の栄養的価値が記載されています。

さらに、EU(ヨーロッパ28カ国加盟の連合)では、2018年1月1日からヨーロッパで昆虫食を含んだ「ノベルフードに関する規制」が施行されていくことになりました。

ヨーロッパでは、食糧に関しては、「ポジティブリスト」制が定められています。1997年までに人々に食べられていて、その歴史を認められている主な食材がリストに記載されています。

1997年以後の新しい食品については「ノベルフード」という正式な申請・認可を受けてヨーロッパ各国での販売が可能となります。

これまでのヨーロッパには、昆虫食の流通を認可する規制がありませんでした。

昆虫食がノベルフードの申請がされ、ベルギーやスイス・フランスなどの企業等から積極的な参加により徐々に認可される国が増えています。

アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどの発展途上国では、牛肉、豚肉、魚、鶏肉などのたんぱく質源としての食材が十分に調達できないために、昆虫は通常の食生活の一部となっています。

ただ、先進国では、郷土食としての位置づけ以外では、心理的な障壁は大きく、受け入れることは難しい状態でした。

それが、将来の食糧危機を乗り越えるには、昆虫食を積極的に取り入れ生き延びるのに必要な栄養源を確保する事を、国連が勧めて勢いがつきました。

さらには、栄養問題、環境問題などの解決にもつながるのではないかと一部の人たちからは支持されています。

昆虫が食材として期待される理由

昆虫を食事として肯定的に捉える人たちの主張は以下のようです。

1.栄養価が高い。

多くの昆虫成分は、文献などから、栄養学的にみて、十分なエネルギー、たんぱく質、アミノ酸があり、低脂肪でCu、 Fe、Mg、Mn、P、Se、Znなどのミネラルなどの微量栄養素が豊富である。

2.飼料効率が高い。

コオロギの肉を1kg増やすために必要な飼料は豚肉と比較して1/4、牛肉と比較して1/12と少ないことが発表されています。昆虫は圧倒的に飼料コストがよいといわれています。また、牛や豚の可食部(食べられる部分)は40%とされていますが、コオロギは100%と、その全てを食べることができます。

3.飼育が簡単。

養殖に必要な水や土地も少なくて済みます。自宅の部屋の中で飼育することも可能になります。家畜の糞を餌として育てられる種類などもいます。

4.環境に優しい – – – – – 持続可能な食糧。

昆虫は養殖時にメタンガスや二酸化炭素などの温室効果ガスをほとんど出さないので環境に優しく、持続可能な食糧となる可能性が高いと言われています。

5.衛生的な調理方法で食する。

昆虫食は生で食べることはほとんどなく、加熱をして食べるので食中毒の危険性が少ない。

6.美味である。

イナゴやざざむし(トビゲラ・カワゲラ)は佃煮で、蜘蛛はチョコーレートの味、蟻はデザートに美味しく食べられるとか。

まとめると、

[昆虫が食材として期待される理由]には、
  1.栄養価が高い。
  2.飼料効率が高い。
  3.飼育が簡単。
  4.環境に優しい – – – – – 持続可能な食糧。
  5.衛生的な調理方法で食する。
  6.美味である。
ということになります。

しかし、これらに対して、違う見方もできます。

一つ々について、見てゆきましょう。

食材として昆虫食に対しての疑問点


1.栄養価の根拠が不明。
2.飼料効率を家畜と比較することは不自然
3.飼育が簡単であるとは言っても容易ではない。
4.「持続可能で環境に優しい」という意見に関しては、
 1)自然の生態系を攪乱する可能性も出てくる。
 2)育てるための餌となる生物を養殖したり、穀類を育てる必要がある。
 3)技術革新による既存の食材の開発に期待。
 4)広域的に販売する場合の問題。
 5)人の生産活動から出される二酸化炭素の方が圧倒的に多い。
 6)世界的な食糧難を克服するためには、国際的な商取引が必要になる。
 7)海洋資源などの無駄を考える。
5.衛生的な調理法で食するというの簡単ではない。
6.美味であるとはいうが、持続的な食事として受け入れられるのか。

具体的に見てゆきましょう。

1.栄養価が高い。

昆虫の栄養価に対しては、提示されているように「タンパク質が豊富で、他の栄養成分も良好である」というのは、調べた限り、公平で科学的な分析によるのかどうかはわかりません。根拠が不明です。

しかも、昆虫といっても種類も多く、その生育過程によっても違いがあることを考えると、総じて栄養価が高いという主張には疑問を感じます。

日本食品標準成分表にはイナゴ煮、蜂の子缶詰については、栄養価の記載がありますが、その他のものは、記載がありません。

人間の食品成分表と比較掲載しているものが多々ありますが、どのような状態で調べられたのかがはっきりせず、かなり大雑把すぎるように思えます。

2.飼料効率がよい。

確かに、飼料効率はよいとはいえるでしょうが、食糧危機が回避できるのなら、食べ慣れている家畜を食べる方が、栄養学的・衛生学的にもよいのであって、そもそも、牛・豚などと比較することが不自然であり、意味があるとは思えません。

3.飼育が簡単である。

この飼育という部分に関しても、家畜や家禽と同じ線上で考える必要はないと思います。

飼育に必要な面積も家畜に比べると狭くて大丈夫、自宅の部屋でも・・・。ただ、密集した状態で飼育すると好ましくない結果もあるということはわかっています。
狭い日本家屋の中では、臭いなど現実的には飼育できないでしょう。

さらに言えば、飼育する際の環境によって、昆虫によっては飼育が不可能な場合も出てくるはずです。

4.持続可能で環境にやさしい。

持続可能で環境に優しいというのは、昆虫食を支持する人たちの中でも環境保護を求める人が多いのも特徴です。

二酸化炭素の排出量だけを見て、持続可能なというのは乱暴な意見です。ここには、いろいろな問題が横たわっています。

1)昆虫食が持続可能な食糧源だという意見に関しては、野生の昆虫を捕獲することになり、乱獲につながる恐れが出てきます。そのために、自然の生態系を攪乱する可能性も出てきます。自然の生態系を撹乱することは、巡り回って人間への影響も出てきそうです。

2)また、食用の昆虫を養殖するとしても、養殖される昆虫には、育てるための餌が必要なわけで、餌となる生物や穀類も養殖しなければなりません。

こうした昆虫の餌は大半が栽培された穀物なので、昆虫を大量生産すれば餌である穀物も大量に必要となり、従来のタンパク源よりも持続可能性が高いとは言えなくなる可能性もでてきます。

3)技術革新による既存の食材の開発

岡山理科大学の山本俊政准教授が独自開発した「好適環境水」を用いた完全閉鎖循環式魚類養殖技術が世界的に注目されています。海の中での魚の養殖が、海から遠く離れた山の上でもできる技術です。

これにより、海の中で、ほぼ自然的に養殖するしかできなかった魚が、牛や豚などのように淡水の管理された環境で、魚を安全に計画的に飼育することができるようになりました。

また、魚類の大型化が実現されつつあります。
収量の増加によって、安定した食糧生産の可能性も高まってきました。

昆虫食を安易に導入する前に、今まで培ってきた畜肉・魚介類の養殖の技術をより向上させることにより、食べ慣れた食材から食糧難を乗り切ることはできないのでしょうか。

4)養殖した昆虫を消費者向けに販売するとなれば、その地域だけの消費では食糧問題は解決しません。

そうなれば、保存性を高めるための加工や、消費者の好みに合わせる手間が必要になります。当然、食品添加物の使用も増えてきます。

商業ベースに乗せるための大規模な生産を行うためには、かなりのエネルギーを消費することになります。製造・加工の工程には、環境保全のために負担すべきコストが伴なうものです。予見できない環境コストが発生する可能性も出てきそうです。

5)家畜が出す二酸化炭素などの問題よりも工業生産など、人の生産活動から出されるものの方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

そういう部分を改善する努力の方が、環境負荷の軽減が大きく、昆虫食への移行よりも優先的な事項だと思います。

6)世界的な食糧難を克服するためには、国際的な商取引が必要になってきます。

そのためには、法整備が必要です。
日本は、EUや米国、カナダなどと有機農産物や有機農産加工食品の格付制度の同等性を認めています。
しかし昆虫食はJASの規格外であるため、このようなことができません。もし昆虫食を同様のものとするならば、JAS規格に入れる法整備が必要になってきます。

7)海洋資源などの無駄を考える

小さいとき、西洋人がが犬を飼うのは、防犯や狩りの手伝いのほかに、非常時には食糧にするためだが、日本人は、馬などの家畜と一緒の屋根の下で暮らし労働力としか使わず、犬はただかわいがるだけでしか飼わない、という話を聞きました。
動物を飼育することに対しての歴史的、文化的な背景は国や地域によって異なるという一例だと思います。

捕鯨の禁止が続く状態ですが、実際にどれだけの鯨が生息しているかの調査はそれほど進んでいないようです。
鯨が一日に食べる魚やプランクトンの量はすさまじいものです。
鯨は頭がよいから食べてはいけないとか、かわいそうだというのは根拠のない感情論です。それならば、犬や猫、猿を食べるのはかわいそうではないのでしょうか。
それぞれの国での食文化を尊重しないで、一方的な感情論で食材の無駄を認容するのは、自らの食糧難を見逃すことになります。

以上が、よく言われる「昆虫食が持続可能な食料源として有効だ」という意見に対しての一つの考えです。

5.衛生的な調理法で食する。

食の安全は、日本では、食品の生産から口元に入るまでは、食品衛生法によって規制されます。

食品衛生法に規定されるには、相当の項目について、非常に多くの昆虫に対しての科学的に根拠のある安全性(事実や実験による検証)が必要になります。

生での摂食の禁止、昆虫の種類・分量による加熱調理の標準化等の基準も必要に思われます。

昆虫食が導入されることになっても、これらを、短期間で定めることは不可能でしょう。

6.美味である。

これは個人の主観の問題なので、意見を言う気持ちはありませんが、人間は食べ物の味覚や嗜好に関しては保守的な動物です。だからこそ、種族を絶やさないでこれました。

好き嫌いの大部分は幼い頃の食体験だと言われています。さらに、成長期にも継続的に食べることができれば、その食べ物に嫌悪感を持ちません。

食体験が良好であり、その後もその食品を食べる機会が多ければ受け入れることもできますし、美味しいと感じることもできます。

確かに、日本でも長野県や群馬県など地方の一部では昆虫食の郷土料理は残っています。ただ、それは戦争中などの非常時での栄養補給などでの工夫による経験で得たもので、その経験によりその昆虫を受け入れることができるようになったからといって、毎日それを食べることができることとは別問題でしょう。個人の感受性の問題だと理解しています。

「面白い」、「インパクトがあって楽しい」、「チャレンジ」などという、エンターテイメント性だけでの摂食では長続きは期待できないでしょう。

以上の1.~6.までの項目以外にも気になっていることは、

・現在の飽食の日本で本当に受け入れられるのか
・捕獲の場合の農薬の影響
・昆虫が本来持っている毒成分の解明
・アレルギー問題に代表される昆虫自体に含まれる体物質や分泌物質が生体に与える影響の解明と対策
・調理方法の標準化
・毒キノコの摂食などにみられる素人判断によって起こる誤食などの防止指針

等、いろいろな問題の解決が必要だと感じます。

現実的な食行動の変容が可能であるかは、以上のような項目を達成できるかにかかっているように思われます。

まだ解明されていないことが多い中、先走った食行動による健康被害には気をつけるべきです。

 

近年話題になっている昆虫食の現状と導入する際に考えるべき事項について述べてきました。

決して否定的な見方や意見ではなく、より深く、その利点(有用性)と欠点(安全性)を考える必要があると思います。

個人的には、菜食主義、さらに肉食に厳しいヴィーガンや、食事に宗教観や哲学的な思想を持つマクロビオティック実践者の方々がどのように、昆虫食を受け入れるのかには興味があります。

タイトルの「将来の私たちの食卓に昆虫が並ぶかもしない」という現実が、そう遅くない将来やってくる予感がします。

新しい技術を受け入れるのと同様に、保守的で世界的な現実を受け入れる勇気を持つこと、食糧危機を回避するためには、新しい食材料を受け入れ、楽しむ努力も必要になってくるのかもしれませんね。

ただ、先進国では歴史が浅い昆虫食ですから、これからいろいろな情報が集められ、整理され、検証され、食の安全性が担保された上で、科学的で安心な一つの選択肢になって欲しいと思います。

《参考文献》

・Edible insects, Future prospects for food and feed security, FAO

・広がるか昆虫食=栄養たっぷり「スーパーフード」-欧州、JIJI.COM、2018/06/16

・昆虫料理研究家が語る、昆虫先進国の日本で「昆虫食」が廃れた理由、内山昭一、インタビュー

・新ビジュアル食品成分表、大修館書店

・実は持続不可能?「昆虫食」の本当の可能性とは、Eustacia Huen、ライフスタイル 2017/05/09

・欧州委員会(EC)、新食品(novel food)に係る新しい規則に係るQ&A形式のECファクトシートを公表、食品安全委員会、食品安全総合情報システム、2015/11/18

・海を知らない海水魚を養殖する、2017.10.27、https://wired.jp/waia/2017/27_toshimasa-yamamoto/「農漁」が世界の食を変える

・わが国における海産魚類養殖の現状とクロマグロの完全養殖、熊井秀水、近畿大学水産研究所

・魚類養殖魚業の経済的研究、古林栄一、京都大学

・日本人の食事摂取基準、2015年版、第一出版(株)

・新ビジュアル 食品成分表(七訂)、(株)大修館書店

たばこを吸う人は吸わない人より、4倍も肺がんに罹りやすい。

疫学は、科学的で正しい判断をするためのもの。

「喫煙者は非喫煙者よりも肺がんの罹患率が4倍である」

このような言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。

さて、何となく理解できるものの、これは本当に正しいことなのでしょうか?

一回の調査をしたら、こういう結果になったけど、再び2回目の調査をしたら違う結果になってしまった。というのでは、信頼ができませんね。

そこで、それを解決するのが「疫学(えきがく)」という考え方と方法です。

疫学は個人ではなく、集団を対象として、病気の発生原因や予防などを研究する公衆衛生学という学問で扱われるものです。

集団を対象とするために統計学を使う必要がありますが、数学の話しはしないので安心して下さい(参考程度に算数は使います)。

疫学は、最初は急性の疾患である伝染病などから私たちを守るために研究されてきましたが、現在では慢性の疾患の生活習慣病をはじめ、集団についてのあらゆる分野で、因果関係の確認に使われています。

なお、集団を研究することは、最終的には、その集団を構成している個々人の健康を守ることになります。

ジョン・スノーの疫学研究

疫学の説明をする前に、歴史的な事件をご紹介します。

1849年に、イギリスのロンドンのブロードストリートでコレラ患者が大量発生しました。

オランダのレーウェンフックが初めて微生物を発見してから150年以上経っても微生物が伝染病の原因であることは明らかになっていませんでした。

その当時、病気は空気の汚れ「瘴気(しょうき)」が原因だとするミアズマ説(miasma theory)というのが信じられていました。
不潔なぞうきんからハエが飛び立ったら、ぞうきんがハエを産んだ(!?)なんてことが信じられていた時代でした。日本では十二代将軍の徳川家慶の時代ですね。

1854年に再びコレラが発生した時、イギリス人医師のジョン・スノウは、瘴気説に疑問を持ち、住民から情報を集め調査を行い、地図上に患者と井戸の存在を書き込みました。

それによって、ブロード・ストリートの井戸がコレラ菌の発生現場であることを特定しました。その井戸水を使用禁止することで、それ以上の流行を防ぐことができました。世界で初めての疫学調査でした。

ドイツの細菌学者ロベルト・コッホがコレラを発見したのは1883年ですから、30年前のできごとです。

この事件でわかったことは、原因が不明の疾患でも疫学的調査により予防が可能であることが示されたことです。

日本では、1883年頃、海軍で脚気が流行していました。
東京慈恵会医科大学の創設者である軍医の高木兼寛(たかきかねひろ)が海軍での兵食改革(洋食+麦飯)を行い、当時なじみの薄かったカレーを海軍の食に取り入れ、脚気を激減させました。脚気という病気の正体がわからないのに麦飯にすることで、スノーと同じように予防をしたことになります。
これは日本で初めて実験疫学的に証明したことで有名な事件です。

この2つのことから、まず、事件が起こると、
・調査をして「仮説」を立てる(記述疫学)。
・次に、その仮説が正しいかを調べ(分析疫学)、
・実行をする(実験疫学)。

という流れが、疫学の手順になりまです。

記述疫学→分析疫学→実験疫学

ただ、記述疫学の結果を分析疫学で分析する前に、「少なくともこれは満たしていなければ仮説としておかしい」と言う基準があります。

つまり、因果関係の確認です。

因果関係というのは、
「Aが起きるとBが起こり、Aが起きなければBは起こらない」

「AがBの原因である」

という関係が成り立つことです。

妥当性を検証する基準はいくつかありますが、一般的なものを述べます(スノーの例を挙げて)。

(1)人、場所、時間の関連に普遍性があるか(関連の一致性)。
例:水道水を飲めば誰でもコレラに罹るのか

(2)効果が定量的かどうか(関連の強固性)
例:水道水を飲めば飲むほどにコレラになる割合が上がるのか

(3)原因のある所に結果があり、結果のある所に原因があるか(関連の特異性)
例:水道水を飲んだ人がコレラに罹り、かつ、コレラ患者は水道水を飲んでいるのか

(4)原因が結果より先に存在すること(関連の時間性)
例:コレラに罹った後から水道水を飲んだだけではないのか

(5)既知の知識体系と矛盾しないか(関連の整合性)
例:水道水やコレラに関するこれまでの研究と仮説との間に整合性はあるか

関連の時間性(原因→結果)は必須ですが、因果関係があった場合に全てこれらの条件が満たされるわけではなく、条件を満たしている場合でも、必ずしも因果関係があるとはいえません。研究の目的に対して疫学研究の妥当性も踏まえて判断する必要があるからです。

コホート研究

分析疫学の1つの手法には、コホート研究( cohort study)があります。

コホート研究とは、ある特定の要因(原因)にさらされた(曝露したといいます)集団(たとえば喫煙習慣群)とさらされていない(曝露していない)集団(たとえば喫煙習慣がない群)を2つのグループに分け、一定期間追跡して、研究対象となる疾病(たとえば肺がん)の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究です。

コホートというのは、一定の期間にわたって追跡される研究目的で構成される人間集団のことをいいます。コホートという言葉は、古代ローマの歩兵隊の単位に由来します。

コホート研究は集団を前向き(将来にわたって)に追跡しているので、曝露から疾病発生までの過程を時間を追って観察することができます。また、その程度を表す指標(危険率など)も求めることができます。

観察の時間的な順序や論理の流れが実験に近く、複数の疾病についての調査が可能であり、特定の曝露の広範な健康影響を調べることができるという利点があります。

一方で、対象としている疾病の発生が稀である場合には、大規模なコホートを長期間追跡する必要があり、時間とコストがかかるという欠点があります。

世界中で大規模なコホート研究が立案され継続しています。
我が国でも、健康に関係するコホート研究は計画的に実行され、その成果を活かせる時期もくることでしょう。

さて、タイトルの
たばこを吸う人は吸わない人より、4倍肺がんに罹りやすい。」というのは、たばこを吸うことによって吸わない人より肺がんになるリスク(危険性)が何倍になるかという意味です。

これは、コホート研究の結果を踏まえたものです。

例として、肺がん発生数と喫煙について疫学の効果指標を求めてみましょう。

「4万人を対象とした研究で、喫煙歴の有無と肺がんの年間新規発生数を調べた。肺がんの発生は喫煙群の1万に中100人、非喫煙群の3万人中75人であった」とします。

危険性を表す効果の指標として相対危険度(リスク比)があります。つまり、「曝露によって疾病発生のリスクが何倍になるか」を示すものです。

相対危険度 = 曝露群の発生割合 ÷ 非曝露群の発生割合
= ( 100 / 10,000 ) / ( 75 / 30,000 ) = 4

というふうに計算ができますので、非喫煙群と比較して喫煙群では年間の肺がん発生の危険が4倍高いと解釈できます。

また、寄与危険度(リスク差)という指標もあり、「曝露によってリスクがどれだけ増えるか」を求めることができます。

寄与危険度 = 曝露群の発生割合 − 非曝露群の発生割合
= ( 100 / 10,000 ) – ( 75 / 30,000 ) = 0.0075

この例では、このように計算されますので、喫煙がなければ1万にあたり75人の肺がん発症を予防できることを意味します。

これ以外にも分析疫学の手法はありますが、日常的に知っていて欲しいのは、コホート研究です。

ただ、因果関係の強さがこれくらいあるという意味であって、そのものすべてが正しいとは言えません。

喫煙の場合を例にとりましたが、実際には、喫煙でがんになってなくなる方よりも喫煙していない方の方が多いというのが現状です。

たばこには非常に多くの成分が含まれていますので、個々の毒性は確認されているし、身体に外があるのはまず間違いはないでしょう。

しかし、私たちの身体は個人差もあり、非常に複雑なので一律的に結論を出すことは、もう少し時間がかかりそうです。

「疫学調査によると・・・」、「疫学的には・・・」という表現があったら、このような意味を持っているのだと理解して頂ければよいでしょう。

 

参考文献
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』・公衆衛生がみえる(株)メディックメディア
・BD(メディカルデバイス)https://www.bdj.co.jp/safety/articles/ignazzo/hkdqj200000awidd.html
・多目的コホート研究(JPHC):国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
・日本多施設共同コホート研究:J-MICC STUDY

血液型の判定が性格から病気に

血液型というのは?

相変わらず、血液型による占いや書籍が流行をしているようです。

血液型による占いが当たるかどうかは別にして、そもそも血液型はどのようにして決められるのでしょうか?

私たちを守る免疫の仕組み --- 抗原抗体反応とは

私たちのからだには、病原菌など外からの敵に対して身を守る防御システムが備わっています。いわゆる免疫といわれるものですね。

細菌やウイルスが体内に入ってくると、からだを守ろうとする働きがあります。

この時に働くのが抗体と呼ばれるもので、細菌やウイルスをやっつけてくれる働きをするたんぱく質の一種で免疫グロブリンと呼ばれています。

細菌やウイルスなどのように、私たちのからだとは違うもので(非自己)、抗体を生じさせるきっかけとなるものを抗原といいます。

Aという抗原がからだに入ってくると、私たちからだではAという抗体ができます。Bの抗原だと、Bの抗体ができます。つまり、対応した抵抗性(抗体)が生まれるのです。

このような抗原と抗体の反応を、抗原−抗体反応と呼んでいます。

血液型は抗原抗体反応

血液型は、ご存知のように基本的にA型、B型、O型、AB型の4種類があって、ABO式血液型分類といわれます。

これ以外にも、Rh血液型など分類の方法によって何十種類も血液型があります。

血液型とは、血液中の血球に存在する抗原、抗体の種類から抗原抗体反応によって分類された血液のタイプのことです。

ABO式血液型

一番よく知られているのが、ABO式血液型でしょう。

A型の赤血球上にはA抗原があり、B型にはB抗原、AB型にはA抗原とB抗原の両方を持っています。O型の赤血球にはA、B抗原はありません。 

A型の人は抗B抗体(B型と反応するもの)、B型の人は抗A抗体(A型と反応するもの)、O型の人は抗A抗体と抗B抗体の両方を持っています。

AB型の人は抗A、B抗体のどちらとも持ちません。

これらの抗原と抗体の反応により、赤血球の抗原と血液中の抗体が、どんな組み合わせで固まる(凝集)かを調べ、表のようにして血液型を判定します。

血液型判定.jpg

以前は、O型は全ての人へ輸血ができると見なされていましたが、ABO以外の型物質(Rh因子など)が存在することもあって、現在では緊急時を除いては通常行われていません。

したがって、輸血をする時には同じ血液型が必要になります。

また、ABO式血液型は、メンデルの遺伝法則にしたがって遺伝します。

A、B、Oの3種の遺伝子が2個ずつ組み合わさって染色体に含まれます。

つまり、遺伝子の組み合わせは、AA、AO、BB、BO、AB、OOの6通りになりますが、OはAとBに対して劣性で、AとBの間には優劣関係はないので、AAとAOはA型、BBとBOはB型、ABはAB型、OOはO型として現れます。

Rh式血液型

ちなみに、Rh式血液型は、赤血球にある抗原で、アカゲザル(rhesus monkey)の赤血球にあるものと同じためRh因子と呼びます。

赤血球に、このRh因子を持つ人をRh陽性(Rh+)、持たない人をRh陰性(Rh-)といいます。

日本人では、99.5%がRh+であることが知られています。

 

血液型と性格は関係があるかのか?

日本で血液型が性格と関係するという話をする前に、ABO式血液型の歴史をみてみましょう。

最も初期に発見された血液型分類であるABO式血液型は、1900年にウィーン大学のカール・ラントシュタイナーが報告しています。

1916年(大正5年)、ドイツに留学した原来復(はらきまた)医師が日本で最初に血液型と性格の関係についてふれた論文を発表しています。

内容的には、当時戦時下でドイツの白人が高等で黒人や黄色人種は下等であるいう根拠のない差別意識から生まれたということです。

日本で血液型ブームが起きたきっかけは、お茶の水女子大学の古川竹二教授が1927年に初めて血液型と性格を関連づける研究を行い、金沢大学医学部の古畑種基教授と長崎医科大学の浅田一教授がこの説を広く世に宣伝したことからはじまりました。

その後、このブームは過ぎ去りましたが、1970年代に能見正比古という作家が古川説を「血液型人間学」として独自にまとめてベストセラーになったことから現在に至るようです。

残念ながら、古川教授の研究は、データの収集方法に問題があり、科学としては成り立たないものであったことです。

現在では、血液型と性格、血液型占いというのは、科学的根拠のない「信仰」のようなものだと考えられています。

個人的には、好きな話題ですけど。

血液型が病気に関係する

ところが、今度は、「血液型=性格」ではなく、「血液型=病気」という話題が持ち上がっています。

2018年には、「血液型によって罹りやすい病気がわかった」とか、「O型が免疫学的に病気に強い」などの記事が見られるようになりました。

東京医科歯科大学医学部名誉教授の藤田紘一郎教授や長浜バイオ大学の永田宏教授が、民族の血液型分布には病気(感染症)が関係して、抵抗力には血液型によって違うと、また、東京大学医学部付属病院放射線科中川恵一准教授は、血液型によって病気の発症リスクが異なるというのを週刊誌の取材で述べています。

これらは、日本人の血液型が、多い順にA型が38%、O型が31%、B型が22%、AB型9%の割合で分布していることを、世界の血液型分布と比較して結論づけています

性格判断とおなじように、なにかうさん臭さを感じるのは、私だけでしょうか?

大規模な疫学的な研究が行われ、情報が蓄積されて、このような見解がでてくることは、病気を予防する上で有効でしょうが、まだ々、科学的根拠となるまでには時間がかかりそうです。

それよりも、生活習慣を改善して、気持ちよく暮らせる日々の努力の方が有意義に思えます。

 

参考文献

・血液型、ABO式血液型、Wikipedia

・人体の構造と機能、医歯薬出版株式会社

・株式会社メディック、免疫の検査、

http://www.medic-grp.co.jp/tebiki/q.html

・大阪大学大学院生命機能研究科認知脳科学研究室、2009.3.27、井上裕哉

・週刊女性PRIME、2018.7.8、血液型でわかる健康

・週刊ポスト、2018.9.21、血液型別「かかりやすい病気が」明らかに

性格から将来の病気がわかります

病気になりやすい行動パターンとは

行動パターンと疾病というと、「血液型による性格判断」などが浮かんでくる人がいるかもしれませんね。

血液型性格分類は、個人的には思い当たる節もありますが、明らかに科学としての根拠がありません。

心理学者の故大村政男先生は、大衆の血液型性格分類を信じる心理状態について、ABO型血液型の分類と性格が当たっているように感じる理由として、FBI効果(フリーサイズ効果(バーナム効果)、ブラックボックス効果(ラベリング効果)、インプリンティング効果)を上げています。思い当たりますね。

行動パターン

それに対して、遺伝的要因や養育環境から形成される特徴的性格による行動パターンは4つのグループに分類されて、疾病要因との関連性が科学的に検討されています。

1.行動パターン タイプA

2.行動パターン タイプB

3.行動パターン タイプC

4.行動パターン タイプD

ご説明してゆきますね。

 

1.行動パターン タイプA

気が短く、怒りっぽい「タイプA」は心臓病リスクが高い

行動パターンが病気の発症と初めて結び付けられたのは1959年のことです。

アメリカの医師・フリードマンが、心臓病の外来で待合室のイスの座面の前の部分の摩耗度から、攻撃的、挑戦的で、責任感の強い人ほど心臓病になりやすいのではないかと考え、このような性格・行動パターンを「タイプA( = Aggressive 積極的な、攻撃的な)」と名付けました。

行動パターン タイプA(これ以後はタイプAと省略します)は、「せっかち(機敏、性急)」、「怒りっぽい(攻撃的)」、「積極的(野心的)」、「競争心が強い(競争的)」、という特徴があり、それぞれにあてはまる人ほどタイプAが強いと考えられます。

タイプAの人は、いつも時間に追われてせかせかと行動するという特徴があります。また、常に何かと競争していて、いくつもの仕事をかかえています。

そうして、自らストレスの多い生活を好み、ストレスを多く受けているにもかかわらず、そのことをあまり自覚せずに無理を重ねた生活をする傾向があります。

タイプAの人は慢性的にストレスを受けている状況であり、これにさらにストレスが加わったときには、反応は通常よりも一層、過剰となります。

そうなるとストレスに対する反応の仕方も血圧が上がる、脈拍が増えるなど循環器系に負荷がかかりやすくなって、これが狭心症や心筋梗塞になりやすい原因と考えられています。

のんびり型のタイプBの人にくらべて心筋梗塞の発症率が約2倍高いといわれています。

日本でも、狭心症・心筋梗塞患者にはやはりタイプAが多いことが指摘され、「敵意」「攻撃性」はあまり表出されず、性急さや仕事中毒といわれるような過剰適応が日本人的なタイプAと考えられています。

虚血性心疾患(狭心症と心筋梗塞)の危険因子としては、大規模な疫学的研究によって、高血圧症、脂質異常症(特に高コレステロール血症)、喫煙、肥満、糖尿病、高尿酸血症などが明らかにされています。

精神的なストレスとタイプAが冠動脈硬化を促進する要因であり、その多くは食行動、喫煙・飲酒習慣、運動不足などの不適切な生活習慣(ライフスタイル)によるものとされています。

虚血性心疾患はまさしく生活習慣(ライフスタイル)の歪みによる病気の代表的なものといえます。

2.行動パターン タイプB

のんびりした「タイプB」は病気になりにくい

内向的でのんびりしており、目立たない性格の行動パターンを持つ人は「タイプB」と定義されています。

フリードマンとローゼンマンが発表する際、“行動パターン タイプA(=Aggressive)”と比較するために“タイプB(=not A) 行動パターン”と命名しました。

タイプBは、あくせくせずにマイペースに行動し、リラックスしていて、非攻撃的な人の性格を持ちます。あるがままを受入れて、なお穏やかに暮らせる、感情のバランスのいい人です。

循環器系の疾患、狭心症や心筋梗塞についていえば、タイプAの1/2程度といわれています。

しかし、まったくストレスを感じないわけではないので、胃腸系の病気、消化性潰瘍、過敏性腸症候群になりやすいといわれます。

3.行動パターン タイプC

我慢してしまう「タイプC」は がんになりやすい

アメリカの心理学者、リディア・テモショックらが、150人以上のがんの患者を面接した結果、共通する性格的特徴として認めたのがタイプCです。タイプCのCは、”Cancer(がん)”の頭文字Cから付けられました。

几帳面で真面目、自己犠牲的、我慢強く、物静かで周囲に気を使う、怒りを表に出さない、他人の要求を満たそうと気を遣いすぎるといった「いい人」がこのタイプの特徴です。

タイプAと一見正反対に見えますが、否定的な感情を表に出せずに押し殺すため、慢性的に過剰な適応によるストレスがたまり、ホルモン分泌や自律神経系に影響を与え、自己免疫が低下すると考えられています。

がんは様々な要因が複雑に絡み合って発症するため、性格が要因の一つとは言い切れませんが、自己免疫の低下はがんにかかるリスクを高めます。

4.行動パターン タイプD

ネガティブ思考で感情表現の苦手な「タイプD」が最も危険

「タイプD」は、「否定的な感情や考えを抱きやすい傾向(否定的感情)」と、「他者からの否認や非難などを恐れ、否定的な感情を表現できない傾向(社会的抑制)」を併せ持った性格のことです。

いうならば、物事をネガティブに考えるだけでなく、自分の考えを他人に伝えられなずにため込んでしまいがちな性格です。

英語の「Distressed personality(悲観的な性格)」の頭文字を取って付けられました。

この性格は1996年にオランダのティルブルフ大学のヨーハン・デノレット博士(精神医学)らの研究グループが、31〜79歳の心臓病など心血管疾患のある約300人を調査したところ、『タイプDの性格の人は、そうでない人に比べ、心血管疾患を患ってから全死亡リスクが4.1倍高いと』いう衝撃の結果を、世界的に有名な英医学誌『ランセット』に発表したことから知られるようになりました。

海外では近年、そんな「タイプD」と病気との関係が注目され、健康への様々な影響が研究されています。

わが国では、岡山大学の研究グループが2010年8月に、日本人に対する初の調査を行ない、さらに世界で初めて、高齢者に限定した調査を行ないました。

その結果、「タイプD」の人の割合は、実に46.3%に上りました。つまり、統計学的に日本の高齢者のおよそ2人に1人が「タイプD」の性格だったことになります。欧米と比べると約2倍になります。これから超高齢社会の時代を生きる人には要注意ですね。

タイプDの人は心血管疾患の他に、高血圧、メタボリック症候群、うつなどのリスクが高くなるといわれています。

予 防

行動パターンと関連する疾患についてご説明をしてきました。

あなたに該当するタイプはあったでしょうか?

性格が、特定の病気の要因になるということに驚かれた方もいるでしょう。

それならば、「性格を変えれば病気にならない」という結論になりそうですが、「自分の性格はどうしようもないじゃないか」という意見の方もいると思います。

性格というのは、

特徴的性格 = 遺伝的要因 + 養育環境

によるものだと考えられています。

遺伝的な要因はどうしようもないですが、特徴的な性格を形作る最大の要因は養育(生活)環境です。さらに、人間は、経験して学び、反省をして生きます。

自分の性格を見直すだけでも、よりよい方向に改める機会が持てる可能性は大きいと思います。

またそうすることによって、疾病(病気)の予防だけではなく、家庭や社会などの社会生活も変えて、「いごごちのよい場所」を手に入れられるチャンスです。

手軽にできる予防は方法は、日頃からストレスをため込まないように、ストレス解消に心がけましょう。

やけ酒、食べ過ぎ、タバコの吸いすぎはやめて、穏やかな生活習慣を身に付けましょう。

参考文献

・四訂 公衆衛生学、建帛社

・主な病気の解説、ストレス講座〜その8 〜 タイプA行動パターンと心筋梗塞、早稲田大学人間科学部教授 野村 忍

・血液型と性格の無関連性—日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠—縄田 健悟1 京都文教大学、心理学研究2014 年、doi.org/10.4992/jjpsy.85.13016

・exiteニュース、2015.11.26、あなたはどのタイプ? 性格から【将来なりやすい病気】を診断

・心疾患患者・家族のストレス、石原 俊一、ストレス科学研究 2017, 32, 10-17

微生物って何だろう?

微生物のことをご存知ですか?

一般的に知られている微生物に対して、はっきりとした理解をしている人は余り多くはないように思えます。

微生物は、私たちの周りの環境に存在し、いろいろな役割を果たしています。私たちの身体の中では、特に腸内細菌などは共生の関係にあります。

健康や栄養などを考える上でも、微生物の知識は必要なものです。

ここでは、最低限知っておきたい微生物の知識について説明します。

微生物の大きさ

まず微生物の定義です。

微生物というのは、小さい生物の総称(まとめたもの)です。

つまり、肉眼では見れないほど小さい生き物ということになります。

人の赤血球は直径7μmほどです。人では皮膚やのどの粘膜、広く自然界に存在する細菌の「ブドウ球菌」の大きさは0.8~1.0μmです。赤血球よりも小さいですね。

μm(マイクロメートル)という単位は1/1000mmの大きさなので、物差しの目盛りを1cm→1mmと目を移して、1mmを1,000に分解した1つと想像して下さい。とても肉眼では見れませんね。

そこで登場するのが光学顕微鏡です。2つの物体を識別できる距離のことを解像力といいますが、普通の光を当ててみる光学顕微鏡では、最大0.2μmです。1,000倍の拡大でも1mm = ( 1,000倍 × 1/1,000mm )程度でしか見えないですね。

微生物のことを、小さい生物のまとめたものと書きましたが、実は、ワカメなどの褐藻類やキノコ類も微生物の仲間です。

あれっ、さっき書いたことと違うじゃないかと思われるかもしれませんが、いろいろな分類方法がある中で、便宜上決められていると理解して下さい。つまり、動物・植物・微生物の3つに区別されているので、微生物に入れるということです。

さて、ちいさい生き物が微生物なんだということはわかりました。ただ、これでは不便なので、実用的な分け方にはどのようなものがあるかを説明します。

微生物の区分

種類に関しては、

・細菌

・真菌

・原虫

・ウィルス

などに大まかに分類されます。

ウィルスに関しては、例外的で理解しにくいので、他の項目に書きますね。

実用的な区分では、

・役に立つかどうか

・病気を起こすかどうか

などでも分けられます。

人間にとって役に立つかどうかということでは、「発酵」と「腐敗」という言葉があります。

人間にとって有益なものは「発酵」、そうでないものは「腐敗」と呼んでいます。

また、食品などの成分で言えば、糖類を含むものを微生物が低分子に分解することを「発酵」、たんぱく質を含むものは「腐敗」と呼ぶこともあります。

だから、匂いの強い納豆やくさやも発酵食品ということになります。私たちが美味しいビールが飲めるのもビール酵母という微生物のおかげです。

病気を起こすかどうかは、その時の人間の状態・環境条件によって違いますが、コレラ、結核、肺炎などはすぐに頭に浮かぶでしょう。

感染症という言葉は、病原性のある微生物による疾病(病気)を指します。食中毒などは微生物によるもののほか、化学物質や毒キノコなどの植物性のものもあります。

微生物の呼び方

微生物の区別が一応わかったので、次は、微生物の呼び方はどうなっているのかを説明します。

水のことを、英語では、 water (ウォーター)、フランス語では eau (オー)、ドイツ語では Wasser (ヴァッサ)、イタリア語では acqua (アクア)といいますが、これを化学式 H2Oとすれば、世界中で意味が通じます。

世界規模で蔓延する病原性の微生物がいると仮定すると、各国がそれぞれバラバラに研究するには限界があります。お互いに共通の認識があって、はじめてその微生物を撲滅する手段を共有できます。

動物・植物・微生物の名前は、世界中で同じように理解されるために国際命名規約という世界共通の呼び方が決められています。

動植物の分類の基礎は、リンネというスウェーデンの博物学者が18世紀に分類表を作って体系づけました。

リンネの考え方に従う形で共有する名前、これを学名といいますが、使用されています。

微生物の学名は、二名法と呼ばれる「属名+種名」が一つの単位になっています。

・ルールはラテン語で表記されること。

・属名は大文字、種名は小文字。

・読み方はローマ字読み。

・一般的にはイタリック体で書く。

例えば、パンやビール・日本酒を製造するための酵母は、Saccharomyces cerevisiae (サッカロミセス・セレビシエ)です。

Saccharomycesが属名で「糖+菌」を表すラテン語、種名は「ビール」を表す cerevisiae から命名されました。「糖を分解してビールを作る菌」という意味ですね。

麹カビ(こうじかび)の Aspergillus niger(アスペルギルス・ニガー)は、日常で見かける機会が多い真菌です。食パンに生える黒カビなどは経験したこともあるでしょう。

映画のエクソシストで神父が聖水を悪魔付きに投げつける場面がありますが、聖水を入れた容器が聖水はけと言われるものです。

Aspergillusは、この聖水はけに似た形をしているところから付けられました。niger はラテン語で黒を意味します。

赤痢菌(せきりきん、Shigella)は、1898年、志賀潔によって発見され、その名にちなんでShigellaという属名が名付けられました。日本人研究者の名前が付いている唯一の例です。

サルモネラ属菌は、感染症に指定されている腸チフスやパラチフスを起こすもの(チフス菌 S. enterica serovar Typhiとパラチフス菌 S. enterica serovar  Paratyphi A)と、感染型食中毒を起こすもの(食中毒性サルモネラ:ネズミチフス菌 S.  enterica  serovar  Typhimuriumや腸炎菌 S.  enterica  serovar  Enteritidisなど)とに大別されます。

Salmonellaという属名は、発見者のダニエル・サルモン(Salmon)にちなんで名付けられました。

鮭だとか猿から分離されたからサルモネラと名付けられたというような問題を出したことがありましたが、正解が少なかったので驚いたことがあります。

肺炎桿菌(クレブシエラ)(Klebsiella pneumoniae)はドイツの細菌学者Klebsiella(クレブス)から、百日咳菌(Bordetella pertussis)は、発見者の一人、「ボルデ」Bordetの名に由来します。

ペスト菌(Yersinia pestis)のYersinia属は発見者Yelsin(イェルサン)に、大腸菌(Escherichia coli)のescherichiaという属名は、最初に分離したオーストリアのEcherich(エシェリヒ)にちなみます。

以上の細菌のように属名が人の名前に由来するものはまだほかにもあります。

属名や種名は、その菌の形や特徴、種名は色・状態などから命名されることが多いようです。

「 Saccharo + myces = 糖 + 真菌 」などのように、語幹の意味がわかると、覚えやすいですね。

微生物といわれるものが、どのようなものなのかを、いくらかでもご理解していただけでしょうか?

基本的なことしか説明できませんでしたので、さらにもう少し深い内容をご説明させて頂く予定です。

参考文献

・微生物学、牛島廣治・西條政幸、医学芸術社

・出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

・goo辞書

・語源で覚える細菌の学名( https://sites.google.com/site/eigotangel/change/bacteria )