血液型というのは?
相変わらず、血液型による占いや書籍が流行をしているようです。
血液型による占いが当たるかどうかは別にして、そもそも血液型はどのようにして決められるのでしょうか?
私たちを守る免疫の仕組み --- 抗原抗体反応とは
私たちのからだには、病原菌など外からの敵に対して身を守る防御システムが備わっています。いわゆる免疫といわれるものですね。
細菌やウイルスが体内に入ってくると、からだを守ろうとする働きがあります。
この時に働くのが抗体と呼ばれるもので、細菌やウイルスをやっつけてくれる働きをするたんぱく質の一種で免疫グロブリンと呼ばれています。
細菌やウイルスなどのように、私たちのからだとは違うもので(非自己)、抗体を生じさせるきっかけとなるものを抗原といいます。
Aという抗原がからだに入ってくると、私たちからだではAという抗体ができます。Bの抗原だと、Bの抗体ができます。つまり、対応した抵抗性(抗体)が生まれるのです。
このような抗原と抗体の反応を、抗原−抗体反応と呼んでいます。
血液型は抗原抗体反応
血液型は、ご存知のように基本的にA型、B型、O型、AB型の4種類があって、ABO式血液型分類といわれます。
これ以外にも、Rh血液型など分類の方法によって何十種類も血液型があります。
血液型とは、血液中の血球に存在する抗原、抗体の種類から抗原抗体反応によって分類された血液のタイプのことです。
ABO式血液型
一番よく知られているのが、ABO式血液型でしょう。
A型の赤血球上にはA抗原があり、B型にはB抗原、AB型にはA抗原とB抗原の両方を持っています。O型の赤血球にはA、B抗原はありません。
A型の人は抗B抗体(B型と反応するもの)、B型の人は抗A抗体(A型と反応するもの)、O型の人は抗A抗体と抗B抗体の両方を持っています。
AB型の人は抗A、B抗体のどちらとも持ちません。
これらの抗原と抗体の反応により、赤血球の抗原と血液中の抗体が、どんな組み合わせで固まる(凝集)かを調べ、表のようにして血液型を判定します。
以前は、O型は全ての人へ輸血ができると見なされていましたが、ABO以外の型物質(Rh因子など)が存在することもあって、現在では緊急時を除いては通常行われていません。
したがって、輸血をする時には同じ血液型が必要になります。
また、ABO式血液型は、メンデルの遺伝法則にしたがって遺伝します。
A、B、Oの3種の遺伝子が2個ずつ組み合わさって染色体に含まれます。
つまり、遺伝子の組み合わせは、AA、AO、BB、BO、AB、OOの6通りになりますが、OはAとBに対して劣性で、AとBの間には優劣関係はないので、AAとAOはA型、BBとBOはB型、ABはAB型、OOはO型として現れます。
Rh式血液型
ちなみに、Rh式血液型は、赤血球にある抗原で、アカゲザル(rhesus monkey)の赤血球にあるものと同じためRh因子と呼びます。
赤血球に、このRh因子を持つ人をRh陽性(Rh+)、持たない人をRh陰性(Rh-)といいます。
日本人では、99.5%がRh+であることが知られています。
血液型と性格は関係があるかのか?
日本で血液型が性格と関係するという話をする前に、ABO式血液型の歴史をみてみましょう。
最も初期に発見された血液型分類であるABO式血液型は、1900年にウィーン大学のカール・ラントシュタイナーが報告しています。
1916年(大正5年)、ドイツに留学した原来復(はらきまた)医師が日本で最初に血液型と性格の関係についてふれた論文を発表しています。
内容的には、当時戦時下でドイツの白人が高等で黒人や黄色人種は下等であるいう根拠のない差別意識から生まれたということです。
日本で血液型ブームが起きたきっかけは、お茶の水女子大学の古川竹二教授が1927年に初めて血液型と性格を関連づける研究を行い、金沢大学医学部の古畑種基教授と長崎医科大学の浅田一教授がこの説を広く世に宣伝したことからはじまりました。
その後、このブームは過ぎ去りましたが、1970年代に能見正比古という作家が古川説を「血液型人間学」として独自にまとめてベストセラーになったことから現在に至るようです。
残念ながら、古川教授の研究は、データの収集方法に問題があり、科学としては成り立たないものであったことです。
現在では、血液型と性格、血液型占いというのは、科学的根拠のない「信仰」のようなものだと考えられています。
個人的には、好きな話題ですけど。
血液型が病気に関係する
ところが、今度は、「血液型=性格」ではなく、「血液型=病気」という話題が持ち上がっています。
2018年には、「血液型によって罹りやすい病気がわかった」とか、「O型が免疫学的に病気に強い」などの記事が見られるようになりました。
東京医科歯科大学医学部名誉教授の藤田紘一郎教授や長浜バイオ大学の永田宏教授が、民族の血液型分布には病気(感染症)が関係して、抵抗力には血液型によって違うと、また、東京大学医学部付属病院放射線科中川恵一准教授は、血液型によって病気の発症リスクが異なるというのを週刊誌の取材で述べています。
これらは、日本人の血液型が、多い順にA型が38%、O型が31%、B型が22%、AB型9%の割合で分布していることを、世界の血液型分布と比較して結論づけています。
性格判断とおなじように、なにかうさん臭さを感じるのは、私だけでしょうか?
大規模な疫学的な研究が行われ、情報が蓄積されて、このような見解がでてくることは、病気を予防する上で有効でしょうが、まだ々、科学的根拠となるまでには時間がかかりそうです。
それよりも、生活習慣を改善して、気持ちよく暮らせる日々の努力の方が有意義に思えます。
参考文献
・血液型、ABO式血液型、Wikipedia
・人体の構造と機能、医歯薬出版株式会社
・株式会社メディック、免疫の検査、
http://www.medic-grp.co.jp/tebiki/q.html
・大阪大学大学院生命機能研究科認知脳科学研究室、2009.3.27、井上裕哉
・週刊女性PRIME、2018.7.8、血液型でわかる健康
・週刊ポスト、2018.9.21、血液型別「かかりやすい病気が」明らかに